三匹の子猫

こっそりと野良猫をベランダで飼っている。あまり大きな声で言えないが、一階ならではの特権だ。ルール違反だけど。

最初に現れたのは三匹の子猫だった。どこからやって来たのかわからない。痩せていて、ごみ収集場のネットに引っかかって泣いているように鳴いたり、冷え込む夜中にママを探しているかまた泣いているように鳴いたり。あまりにもかわいそうだったので、ある日の朝、お煮干と牛乳をベランダに置いた。とても嬉しそうに食べてくれた。こちらを限りなく警戒していながら。

三匹の子猫とのゆる~い関係はしばらく続いた。ちびも子猫が好きで、食べ物をあげたり絵本を見せたり、あいさつもしている。親は一回も姿を見せていない。迷子だったと思った。

関東地方を掠った台風が来る前日の夜、僕は古布を敷いたダンボールをベランダの隅に置いた。防寒防雨の対策だ。翌日、窓を開けて食事を用意しようとする時に、ダンボールの中から小さな頭が三つ出てきて、とても可愛かった。数日後、あれ?なんか一匹が大きくなったなぁと思ったら、お母さん(たぶん)だった。子どもたちを置いてどこに行ったのだろう。

その時から、三匹の子猫はお母さんと一緒にうちのベランダのダンボールで夜を過ごすようになった。温かい牛乳が好きみたいで、毎朝待っているかのように、窓をガラガラ開けるとみんなダンボールから一斉に頭を出す。面白い。

子どもたちが食べ終わるまで、お母さんは必ずそばで見守る。最初はとても私たちを警戒していて、少しでも近づいたら背を尖らし、冷たい目線で「来るなよ。何するつもり?」というビームをバシバシ送る。でも最近はすっかりやさしい顔になった。完全にお母さんの顔だ。目がやさしいの。不思議だ。猫って表情があるんだね。

近所に迷惑がかからないように気を使ってはいるが、このようなゆるい関係はいつまで続くだろう。


朱に交われば赤くなる

かみさんは正真正銘折り紙つきの日本人だが、なぜかよく外国人と間違えられる。

初めて間違えられた時のことを僕はよく覚えている。子どもはまだ生まれていない数年前の冬、二人で箱根をふらふら旅行した。強羅駅で当日に泊まる旅館を予約しようと、かみさんに電話をかけさせた。外国人は宿泊を断られることがあると聞いたから。

旅館は無事に取れたが、電話を切ったかみさんは首を傾けてトホホな表情を浮かべた。自分の日本語が外国人っぽいと思われたらしく、最初は断られたんだって。でもその時、かみさんが外国人と間違えられたことより、本当に外国人を断る旅館があるんだという事実のほうが僕にはショックだった。

その後、しょっちゅうではないけれども、かみさんが「どの国から来たんですか?」みたいなことを聞かれるというのは、もはや珍しいことではなくなっている。

先週、かみさんは会社の最寄り駅で警察に声をかけられた。最初警察は「カバンが開いているから気をつけてくださいね」みたいなことを言って、かみさんはおお親切だねと思ったら、その警察は続いてこう言ったそうだ。

「すみませんが、外国人登録書を見せていただけますか?」

つい顔まで外国人っぽくなったか。すみませんね、ハハハ。