東京愛情故事の旅?

東京愛情故事の旅?

バス停の前で手作りの「松山看板」を車に見せてから約20分経過。停めてくれた車は無かった。「やっぱりだめか」と思って諦めようとする時に、奇跡が起きた。

3分ほど前に目が合った、昭和の匂いがする小さな車を運転する女の人は、左の車線を逆行してバス停の前にやってきた。運転席の窓を下ろして僕に声をかけた。

「松山行く?」

パーマをかけた長い茶髪をしている、ときどき気持ちよさそうにタバコを飲む、素足じゃないと運転できないという人だった。東京ラブストーリーのあの小学校の柱を見に来たと僕が言ったら、彼女は小学校六年生の時に東京ラブストーリーに出演したことがあるという話をしてくれた。完治がリカを探すために通っていた小学校に行った時、体育館で楽器を演奏している子供たちの中の一人だった。僕はこの不思議な偶然に息を呑んだ。

村上春樹の『東京奇譚集』には、「それが起こったことによって、人生の流れに変化がもたらされたわけでもない。僕としてはただ、ある種の不思議さに打たれるだけだ。こういうことが実際に起こるんだ、と」と書いてある。僕の気持ちもそれと似ている。

伊予鉄道のいよ立花駅まで送ってもらったあと、彼女は街の角へ消え入る車の中から手を振ってくれた。僕は腕時計に目をやり、短い針がちょうど4のところに重なっている。本当に、ありがとう。おかげでなんとか間に合った。

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リカと完治が分かれた駅は、松山市の北にある、海に面する梅津寺(ばいしんじ)駅だった。

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ホームのベンチに座ってぼんやりと海とハンカチを眺めていた。15年経っても、色々な恋の証しはまだ増えているようだ。

永尾完治、赤名莉香、さようなら。

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