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引越し記 (1)


八年間住んでいた小さなアパートを出ていく日は、大雨だった。

片づけが間に合わず、やってきた引っ越しの業者さんに追い出されたかのように慌てて荷物を段ボールに詰め、さようならを言う暇もなく去っていった。

作業スタートは午後2時半だった。作業員三人は二、三軒ぐらい回っていたようで、みんなびしょびしょ濡れていて疲れているようだった。服はパンフレットのようなキチンとした制服ではなく、よれよれの汚れていた普通のTシャツと普通の作業ズボンだった。トラックの荷台もビニール式のふらふらする屋根で、車全体はおんぼろまでは言わないけど、近かった。安いコースを頼んだからある程度は開き直っていたけど、想像を超えた。

二の腕に入れ墨があった指揮役のお兄さんは終始笑顔一つ無かった。言葉遣いは丁寧だったが、目から有無を言わせないビームが出ていた。それもそうだ。約束の時間に来たのにまだ荷物を段ボールに入れてないお客さんは困るものだ。

しかし彼らは確かにエース級の働きをしていた。30平米未満の部屋にしては決して少なくない荷物を、本当にあっという間にトラックいっぱいに詰め、(家の前の道が狭いから)二往復して全部の荷物と家具を新居に移してくれた。養生などのカバーは適当にやっているように見えるけど、実は要領をしっかり押さえていると思われる。荷物も部屋も傷一つなかった。引越しには恐らく最悪であろう大雨だったというのに、荷物はほとんど濡れていなかった。家具も全部間取り図に書いた通りに設置し、本棚も天井までしっかりと固定してくれた。

三時間ちょっとで引越しの作業が終わった。忘れ物のドライバーセットがあると僕が電話でお客さまセンターに伝えると、あの怖いお兄さんが取りに来た。ほんの一瞬だったが、彼は微笑んだ。

そして60個以上の段ボールとの戦いは、始まった。


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